




PROJECT MEMBER
DATA
- ビルディングタイプ
- 共同住宅・集合住宅・寮
- 工事種別
- 新築
- 延べ床面積
- 75㎡
- 竣工
- 2024-12
CREDIT
- 撮影
- 中倉康介
- 設計
- スケルトン:成瀬・猪熊建築設計事務所 インフィル:中倉康介建築設計事務所
- 施工
- 河津建設
旅が趣味の夫妻は、これまで訪れた国や地域で心惹かれた雑貨や小物を収集してきた。棚に並ぶ品々には、各々の土地に根付く文化の気配や、それらを少しずつ集めた時間の積み重ねが感じられた。新たな住まいでもその空気感を引き継ぎ、旅の記憶が自然と生活の中に溶け込むような居場所をつくりたいと考えた。 家づくりはまず躯体や間取りを計画し、次いでインテリアの細部を詰めていくことが一般的であるが、インフィル設計を担当した本計画では、施主が旅の記憶とともに大切にしてきたアイテムを起点にデザインを展開した。必要な機能と動線を組み込みながら、インテリアと建築が一体的に調和する住宅を目指した。 その象徴的な要素が、寝室とワークスペースを緩やかに隔てるアラベスク模様の建具である。アラベスク模様は、植物の茎・蔓・葉・花などをモチーフとした幾何学的なパターンが反復しながら延々と続くことから、無限の広がりを感じさせる装飾として建築や金属細工、絨毯などに用いられてきた。この建物では、旅先で多様な文化や風景に触れて広がり続ける施主の感性やライフスタイルを、その無窮の模様に重ね合わせて表現した。 透け感のある4枚引きの引き戸は、閉じても圧迫感のない執務空間をつくることを意図したものであるが、開放時にも寝室と一体的な空間を華やかに彩るアクセントとして機能する。書斎を設けつつ、部屋が細切れに分断されてしまわないようにする工夫である。リモート会議の際にも、美しいアラベスク模様が背景として映える向きにデスクを配置している。製作段階では模様の種類や大きさ、線の太さなどについて検討し、造作建具の工場と面材としての強度や切削精度を協議しながらデザインを決定した。 その他、各所の素材や色彩についても、異国情緒を感じられる要素が散りばめられている。南洋材のチークフローリング、マスタードイエローの玄関ドアと階段手摺、四方を窓とテラスに囲まれたリビングを彩る観葉植物。それらが互いに調和しながら、旅の記憶へと静かに接続する。世界各地を旅する二人が、この家を心の拠り所として、心地よい時間を過ごすことを願っている。 企画・プロデュースをアーキネット、スケルトン設計を成瀬猪熊建築設計事務所が担当したコーポラティブハウス「風の道テラス」のインフィル設計。