




補足資料


PROJECT MEMBER
DATA
- ビルディングタイプ
- パビリオン・イベントブース
- 構造
- 鉄骨造
- 工事種別
- 新築
- 延べ床面積
- 1750㎡
- 竣工
- 2025-01
CREDIT
- 撮影
- Minh Anh – NOTES / Tan Nguyen
- 設計
- Takashi Niwa Architects
- 担当者
- 丹羽隆志、Tran Thanh Tung、Trinh Thuy Hien、若狭勇汰、Bui Thi Thanh、島崎真凰
- 施工
- ConsMedia
アシュイ賞 (Ashui Award) は、ベトナムの建築業界における著名な賞である。この賞の授賞式と1週間の展示会場としてハノイ市内に設けられたのがこのアシュイ・パヴィリオン (Ashui Pavilion) 2025である。このデザインでは、賞の受賞者だけでなく建設業界を支える見えざる貢献者たちへの着目を生み出すことが意図された。 ベトナムの発展を支え、数々の建築作品を形づくってきたのは、この賞の対象となった建築家や投資家だけではない。建設現場で汗を流す労働者、資材を運搬する運転手、足場を組む職人、そして地中の工事を支える鋼矢板のような仮設材料――これらの「見えざる英雄」たちなくして、建築は成立しない。しかし工事の進捗とともに、彼らは静かに現場を去り、建物の表層に残るものだけが注目を浴びるようになる。 このパヴィリオンが建設される3か月前の2024年9月、台風ヤギがベトナム北部に甚大な被害をもたらした。その復興の最前線で活躍したのは、堤防を補強し、橋脚を支える鋼矢板をはじめとした基盤工事だった。300名以上の犠牲を出した自然災害からの復旧の中で、見えないインフラの技術こそが、都市の持続可能性を支える礎であることを示した。 この鋼矢板を使用してアシュイ・パヴィリオンはつくられた。用いたのは6mから12mまでの異なる長さの鋼矢板69枚。現場で付着した土や錆をそのまま残し、様々な建設現場を支えてきた痕跡を宿している。この矢板を、井桁を崩したような「く」の字型に積み重ね、相互に支え合うことで自立構造を実現している。鋼材は最大8mの距離を支持材なしで渡り、水平のストライプ状の空間を形成する。 鋼材の表面には土のにおいや錆の質感が生々しく残り、その隙間からは会場を囲む豊かな緑が垣間見える。赤錆びた鋼と熱帯の瑞々しい緑が織りなすコントラストは、力強くも美しく、唯一無二の風景を生み出している。 施工はわずか4人の作業員によって、工期1日で完成した。これだけの規模のパヴィリオンにもかかわらず建設費は約60万円と、極めて経済的に実現され、廃材も出さない。インフラ材料としての特性を活かすことで、金銭的にも工期的にも効率的な実現が可能となり、これらの材料の新たな可能性を探る実験となった。展示終了後、鋼矢板は再び集積地へ戻され、次の建築現場で新たな役割を担っている。 この「貢献の可視化」は一時的なものでしかない。展示期間はわずか1週間。その後、鋼矢板は再び姿を消す。しかし、たとえ束の間であっても、普段は見過ごされる存在に光を当てることには意味がある。それは私たちの認識を変える小さな契機となりうるからだ。建築を本当に支えているのは誰なのか、何なのか。このパヴィリオンは、その問いを投げかけている。
