




補足資料





PROJECT MEMBER
CREDIT
- 撮影
- 大木宏之 / Le Nguyen Bao Uyen
- 設計
- Takashi Niwa Architects
- 担当者
- マスタープラン:丹羽隆志、Vu Thi Thanh Huong、Nguyen Phuong Anh、Tran Thanh Tung、高橋京平 / 建築+インテリア(北海道幸):丹羽隆志、Tran Thanh Tung、Nguyen Phuong Anh、Bui Cong Ky、Mai Ngoc Anh、Bui Thi Thanh、Pham Huy Hoang
- 施工
- NINOCONS(インテリア)
- 構造設計
- NEY & Partners Vietnam(折り紙屋根)
曲線を描くランドスケープの中から、光を放つ屋根が浮かび上がる。ホーチミン市の日本料理店「北海道幸」を擁するアーバン・スパークルは、薄さ4mmの鋼板を折り紙構造で自立させた屋根を実現したベトナム初の試みをもつ複合施設だ。通りから、地下鉄から、高層階から──3つの異なる視点から見られるという都市的条件に応答し昼と夜で異なる表情を見せる建築群である。 <3つの視点から見られる都市的条件> 新しいブランドが集まり、盛り上がりを見せるホーチミン市の最先端の開発エリアであるタオディエン地区の中で本プロジェクトは幅員30メートルの通りに面している。ホーチミン市初の地下鉄の高架部分を前面に臨み、周囲は高層住宅タワーに囲まれている。すなわち「通りからの視線」「通過する電車からの視線」「上層階の窓からの見下ろし」という、3つの異なるアイレベルから視認される特異な条件下にこの敷地がある。 メインの建物はクライアントにとって初めての更地から作り上げるレストランであり、彼らの旗艦店としての発信力をもつデザインが求められた。ベトナムのライフスタイルにおいて、レストランは誕生日や記念日などの大切な瞬間を祝う場として特別な意味を持つ。週末にはパフォーマンス会場としても活用されるランドスケープとあわせて、クライアントの運営する別のレストランが入る敷地内の他2棟の建物も同時に計画された。敷地全体の構成はカーブを用いた流動的な空間として統合され、3棟の建物がランドスケープと一体となって配置されている。 <折り紙構造という選択> 中心となる日本料理店を擁する建物は「雪の結晶」を暗示する彫刻的なアイコンとして「スパークル(輝き)」型とした。北海道という店名が示す北国との関係を熱帯のホーチミン市で空間的に表現する試みである。曲線は、店内の動線としても用いられ、天井高の変化や視線の誘導によって、ゲストの移動そのものを体験へと変える。折り紙に着想を得た鋼板屋根と木製パネルによる壁は、幾何学パターンを用いながらレストランのアイデンティティを演出する装置となっている。 <光を導く幾何学──昼と夜の二面性> 折り紙屋根には5つの天窓が設けられた。日中はこの天窓から自然光が階下へ導かれ、内部を豊かな光で満たす。折り目に生まれる陰影が時間とともに移ろい、幾何学によってつくられたかたちが動的な体験へと変化する。 夜間は逆に、天窓から内部の光が外へと放たれる。中心の星形と4つのスリットからあふれ出た光が都市の中で祝祭の光を放つ。 <4mmの鋼板で6mスパンを支える> この建築の技術的挑戦は屋根にある。最大スパン6メートルに対し厚さわずか4ミリの鋼板を使用し、折り紙の持つ特性によって薄い鋼板に剛性を与えた。材料を有効に使う合理的な構造システムは、ベトナムにおける薄鋼板折り紙構造の先駆的な事例となった。各折り目は構造的な強度、光の反射角、そして天窓の配置を同時に決定している。 このデザインの実現には、現地の金属加工技術を最大限に引き出すことが不可欠だった。複雑な3次元形状を2次元の展開図に変換し、現場での組み立て精度を確保するプロセスそのものが設計の一部となった。限られた予算と工期内で実現できたのはベトナムの職人との協働があったからだ。 <都市の中の祝祭の場へ> ランドスケープデザインはカーブを用いた建物のデザインと呼応している。エントランスからS字型の屋根によって引き込まれた人々は、週末のパフォーマンスのためのステージへ、そして星形の建物へといざなわれる。 都市の中にうまれた曲線によって浮かび上がる幾何学。その彫刻的な存在感は、発展する都市の新たなランドマークとなり、ベトナムの人々が大切な瞬間を祝う場所となった。昼は光を楽しみ、夜は光を放つこの建築は、きらめくひとつの祝祭性を体現した空間である。
