




標高1,770m。竜王マウンテンリゾートの山頂エリアに建つ展望塔である。 本施設が位置する竜王マウンテンリゾートは、もともとスキー場として運営されてきたが、オフシーズンの利活用を見据えた転換が進められている。特に、発生率62%を誇る雲海を眼下に望む山頂という立地特性を活かし、展望テラスの整備やレストランのリニューアルといった投資が行われ、春季・夏季の集客力向上が図られてきた。本展望塔は、その動きの中でさらなる誘客の核として計画されたものである。 童話『ジャックと豆の木』に登場する“豆の木”のように、人々が思わず登りたくなるような物語性を備えた展望塔を、との要望があった。これに応え、大木に絡みつく蔓を抽象化したような螺旋階段を提案した。階段の螺旋径は一定ではなく、場所によって変化を持たせている。これにより、有機的で動きのあるフォルムを生み出すとともに、登る体験そのものにも変化をもたらしている。 登り口から支柱に至るまでのアプローチは、擁壁によって急峻な高低差を横断する構成となっており、橋梁的な構えを見せる。ここは、日常と非日常の境界、すなわち“異世界への結界”としての役割を果たしている。その後、支柱に取り付けられた段板を螺旋状に上ることで、一時的な安心感が生まれる。さらに上部へと進むにつれて蹴込板が消え、螺旋径も拡がる。階段が支柱から離れていくことで、浮遊感とスリルが増していき、やがて最上段に至る道程となっている。 最上段は半円形の平場となっており、全方位に広がる空や山々の風景を望める。条件が整えば、一面に広がる雲海に出会い、刻々と変化する幻想的な風景に身をゆだねられる。 完成までには多くの困難があった。現場への車道が存在せず、資材はロープウェイに懸架して輸送する必要があり、搬入可能なサイズも制限された。また、急斜面であることや揚重機が無い等、厳しい施工条件のもと、部材の分割や軽量化を図る必要があった。これらの課題に対応するため、早い段階から構造設計者、地元建設会社、意匠金物製作会社とチームを編成し、数々の制約を乗り越えながら実現に至った。

