上野芝・古墳をのぞむ終の住処

ビルディングタイプ
戸建住宅

DATA

CREDIT

  • 撮影
    Akiyoshi Fukuzawa
  • 設計
    株式会社seki.design
  • 担当者
    石憲明
  • 施工
    有限会社建築ランド / キッチン:GRAFTEKT
  • 構造設計
    うきょう建築構造事務所

夫婦の〈終の住処〉として計画された住まいです。周辺は閑静な高級住宅街で、空が広く、ゆったりと大きな邸宅が並ぶまちなみですが、しかし、この敷地はその中でも特別な場所性をもっているといえます。それは、上石津ミサンザイ古墳を取り囲む濠のほとりにあるということ。濠の向こう側には、世界遺産〈百舌鳥・古市古墳群〉の主要な構成要素のひとつであり、国内第3位の規模を誇る墳墓によって、古代から育まれた豊かな森が広がっています。 今回はそんな場所に、地上木造2階建て、建築面積156.3m2、延べ床面積195.2m2という大きな住宅を計画しました。設計においてまず意識したのは、この古墳の眺めです。住まいのなかのできるだけ多くの場所で、このうつくしい緑を借景として取り込むことができるような構成とすること。そして1階の濠に面した部分には、景観を一望し、くつろぐことができるテラスをつくりたいところです。 しかし、それらにあたってひとつ大きな問題は、古墳と敷地の間に、見栄えがいいとはいえない2mもの高さの古びたフェンスが立ちはだかっていることでした。単にこれを隠そうとすると目の前の風景も見えなくなってしまいます。そしてこのフェンスは宮内庁管轄のものであるため、手を加えることはできません。 まずは1階の床高を上げることにしましたが、やりすぎると景観をまもるために一帯で厳しく設定されている建築物の高さ制限に抵触してしまいます。また道路からのアプローチの高低差がつき過ぎるのもよくありません。試行錯誤のすえ、1.1mの床上げに加え、古墳をのぞむテラスに0.9mの落下防止の手すりを設けることで、古びたフェンスを無理なく自然に隠すことができました。 一方、床高を上げた関係上、総2階建てにしてしまうと北側斜線制限をクリアすることが難しくなります。そこで、クライアントが日常的に使用する機能・部屋をすべて1階に集約し、2階のボリュームを最小化することで調整しました。 そうして1階部分が大きくなったことで、構造を無理することなく、動きのある平面形状を実現することができました。整形矩形にとらわれることなく、諸室を配置すべき場所に配置することで、古墳の景色を切り取ることと便利な動線を両立。就寝時以外は2階に上がる必要がなく、結果として終の住処にふさわしい平屋のようなぜいたくな空間となりました。 古代の王が眠るといわれる墓と、それをまもる1500年以上の時を紡いだ豊かな森の借景を、日々の暮らしのなかで楽しんでいただきたいと思います。