




補足資料

PROJECT MEMBER
<ベトナムを紡ぐ文化のタペストリー> ベトナムの首都ハノイにある大規模ビュッフェ・レストランの第一期リノベーションである。ハノイの風景の一つである「西湖の蓮」という名前を冠したこのセンタイホー(Sen Tay Ho)レストランは地元の人々や外国人観光客が訪れるハノイ有数のビュッフェ・レストランである。総敷地面積12,000㎡の中の一角、1,350席のメインダイニングを2階に擁するビュッフェ、ダイニング、個室、宴会場、エントランスホール、トイレエリアの計3,200㎡のインテリアをまず更新する。改修前はピークタイムに多くのゲストで混み合い食の美しさが感じられないこと、広さゆえにゲストが席を見失うことが課題であった。 ベトナムの魅力はその多様性である。54の民族、南北で大きく違う気候、長い海岸線と標高3,143メートルのファンシーパン山をはじめとした山岳エリア。これらの多様性を凝縮して「ベトナム・タペストリー」というコンセプトにまとめる。ビュッフェで提供されるベトナム各地の料理を縦糸に、さまざまな地域のデザイン要素や材料を盛り込んだ空間が横糸となり、ベトナムの様々な文化を紡いだ風景のタペストリーとなる。色彩、テクスチャー、技術、文様などを空間に織り込むことで、ゲストが料理とともにベトナムの旅を楽しむことを図った。 エントランス階段では、ハノイの並木の木漏れ日のような木製アーチ群がゲストを迎える。暗い壁に輝く金属の象嵌は、ベトナムの農家に飾られた真鍮の黄金色である。二階のメインフロアでは木製の立体的な屏風と出会う。振り向くと少数民族が受け継いできた多彩な色彩の織物を組み合わせた、ねじれるスクリーンがゲストの目を楽しませる。 <5つのアイランド型ビュッフェ> ストールと呼ばれる食事を揃えるカウンターは、ゲストにとっての最もエンターテイメント性の高いビュッフェ・レストランの核である。かつてのストールは大きく2つの島に分けられた直線のストールで混雑時に人が並び、食事との関係性が作れなかった。そこで必要となる長さ90メートルのストールを大小異なる5つの島に分割し、回遊動線を作り出した。 ストールは曲線を用い有機的な形状とすることで、混雑時であっても立体的に食を見せる。またストール周辺に人だまりができる場所がつくれ、周回するゲストの移動を妨げない動線のコントロールが可能となった。 ストール周りは混雑時には多くのゲストで料理への視線が遮られる。そこで5つの島の上部デザインを食事のタイプを示す視覚的な手がかりとした。編まれた竹(ベトナム料理)、手すき紙の照明(サラダ)、丸く切られた鉄板(焼き物)、植物柄のパネル(フルーツ)、バックライトを仕込んだ穴あきパネル(デザート)。料理タイプを反映する素材で構成され、サインに頼らないナビゲーションとなる。機能的でありながら混雑時であっても楽しめる空間的個性を与える仕組みである。 また5つのビュッフェストールの間の通路をベトナムの竹を用いて装飾し、風情を伝えるとともにV字にすることで人々の交通ナビゲーションの機能も与えた。 機能性を担保しながら、バラエティ豊かな食と素材を織り上げた、体験的、エンターテイメントの場となった。 <個性を持ち込んだダイニングスペース> 総計1,350席のダイニングが、ゲストの要望に応じてグループで貸し切ってイベント等、プライベートな用途にも対応できるのが、このビュッフェ・レストランの特徴である。大小12の部屋・ゾーンに分け、それぞれに個性を与えることで、使用するゲストはもちろん、ビュッフェへと向かう動線を変化に富んだ風景が彩る構成となった。特に200席を擁する宴会場は、既存のトラス構造梁をさけながら天井の高さを最大化する波打つシルク色の天井とした。その他の部屋・ゾーンも、旋回する竹、リズミカルな影を作り出すレンガ壁、金色に塗装されたもみ殻の壁面など、ベトナムの風景から抽出された材料・形態が個性を作っている。 工事は、閑散期を利用して営業をとめず行われた。今後、次の閑散期を待って約1,200㎡のダイニングエリアを更新する二期工事へと続いていく。ゲストが食事を発見し、選ぶ楽しさの中に、ベトナムにいることを実感し、誇りを持てる背景を用意する。更新が完了した際には、大規模ビュッフェにおける多様性と親密性の両立、その一つの可能性を示したデザインとなる予定である。
