
PROJECT MEMBER
1960年代に多摩丘陵に開発された閑静な住宅地に建つ、夫婦と子供ひとりのための住宅。敷地は急な坂道に面した角地で、東側隣地は40cm高く北側は80cm低い。一方道路側には擁壁がなく、敷地内には約2mの高低差が残され、かつての丘陵の断片が読み取れた。この起伏を均して建てる従来の造成では、環境がもつ固有の魅力が暮らしから切り離されてしまうと感じ、地形の記憶を空間へ取り込むことを考えた。 まず周辺の建ち方に倣い、同規模の矩形ヴォリュームを配置しつつ、街並みに連続する庭をつくった。擁壁の代わりに土留を兼ねたコンクリート基礎を既存地盤に合わせて二段に設定し、その上に木架構を載せる構成とする。さらに床仕上げを分節し段状に連続するひとつながりの空間をつくった。こうして生まれるレベル差は、視線や領域を緩やかに分けるだけでなく、腰掛けたり背を預けたりと身体的な拠り所にもなる。 外周部の立ち上がりは高さを揃えて風景へ馴染ませ、内部では床レベルに合わせた。架構より下が地形に従い、上部は一間半モジュールの木構造に切り替わることで、空間に2つの秩序を重ねている。また南側両端に設けた幅390mmの柱により間口いっぱいに庭へ開く開口を可能にし、四方に設けた開口によって、どこにいても光と風を感じられる開放的な空間となっている。 地続きな床の変化が環境との結びつきを生み、地形が積み重ねてきた時間を日常の暮らしへと接続していくことを目指した。
