PROJECT MEMBER
京都・八幡市、坂を登った先に位置するベーカリーカフェ〈Camphora〉の計画である。 車通りに面した立地条件のもと、店舗としての視認性を確保しながら、まちの風景に静かに馴染む佇まいを目指した。 既存店舗を解体する過程で、RC躯体が露出し、壁や天井には構造体そのものが持つ力強い表情が現れた。本計画では、それらを新たな仕上げで覆い隠すのではなく、空間の基調として受け止め、どこまでを建築として残し、どこで止めるかという判断を積み重ねながら構成している。梁や配管もあえて露出させ、構造と設備が空間の一部として立ち上がる状態をつくった。 ファサードには西側に大きなガラス面をもつ造作建具を設け、内部の気配や光の変化が街路へにじみ出る構成とした。木枠は段差を設けて断面をシャープに見せることで、既存の花壇や周辺環境と過度に対立しないよう調整している。花壇には店主が選んだハーブや草木を植え、建築と植栽が連続する外部空間として計画した。 内部は、既存タイルやコンクリートを基準面とし、床の欠損部には古材を挿入することで、時間の異なる素材が重なり合う構成とした。客席は一様な居心地とせず、光の入り方や天井高さ、周囲との距離感によってそれぞれ異なる性格を与えている。来訪者がその日の気分に応じて好きな場所を選び取れる空間となることを意図した。 店主とは昔馴染みであったこともあり、素材や納まりについて対話を重ねながら計画を進めることができた。時間の痕跡を受け継ぎながら、新たな日常を受け入れる場として、まちに根付くことを願っている。
