




都市の喧騒から一歩引いた、菓子と向き合う空間。 横浜駅直結の商業施設内に出店する洋菓子店の計画である。 ブランドが大切にしてきた「丁寧につくられた菓子の品格」を、空間体験として翻訳することを目指した。 単に商品を美しく陳列する場ではなく、菓子と向き合う時間そのものをデザインすることをテーマとしている。 空間は全体を通してトーンを抑えた色彩計画とし、左官の壁面や什器によるマットな素材感によって、焼き菓子の色味や質感が最も美しく際立つ背景を構成した。 空間全体に緩やかな曲線を取り入れ、視線と身体の動きをやわらかく導くことで、治一郎の菓子が持つ「やさしさ」や「余韻」を空間的に表現している。 また、照明計画ではやさしくも存在感のある発光するFRPの下がり壁によって商品の存在感を引き立てながらも、空間全体には静かな緊張感を与えた。 駅直結という賑わいの中にありながら、一歩足を踏み入れると気持ちが整うような、菓子と向き合うための“間”をつくることを意図している。 治一郎の菓子づくりに通底する「手間を惜しまない姿勢」を、素材選定からディテールまで丁寧に積み重ねることで、ブランドの世界観を空間として結晶させた店舗である。