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在日朝鮮人と朝鮮学校 在日朝鮮人とは、1910年に日本が朝鮮半島を併合した後に日本へ移住した人々、あるいはその子孫を指す言葉である。その在日朝鮮人たちが自分たちのルーツと母国語を学ぶため、継承してきた場所が朝鮮学校であり、現在、日本全国に51校が点在する。そのひとつである川崎朝鮮初級学校は小学校と保育所が併設された全校生徒40名程の小さな学校である。 拡張空間としての雛段状のテラス 築50年以上の旧校舎は、生徒数の減少や老朽化を背景に生まれ変わることを望まれていた。建設計画のなかで敷地の一部を売却し、残る土地に新校舎を建設することになったが子供たちの活動の場が狭まれてしまうという大きな懸念が最初にあった。それに応じるかたちで2階建ての建築のボリュームを調整し、子供たちが遊び回れるような、グラウンドと連続する開放的な雛段状の3段のテラスを提案した。3段のテラスはグラウンドから階段によって直接自由に往来することができ、グラウンドを補完するこどもたちの活動領域の拡張空間となる。 まちの風景となる舞台 雛段状の3段のテラスでの活動は周辺地域から視認することができる舞台となる。3面が道路に接する敷地は、各通りから子供たちを見渡すことができ、地域住民にとってテラスで走り遊ぶ子どもたちの姿が日常の風景となる。また運動会、文化祭、地域交流会が催される日には、雛段状のテラスはグラウンドを望む観覧席になったり、グラウンドや周辺地域を観客席とした朝鮮舞踊や演奏で文化を披露する舞台にもなる。雛段状のテラスでの活動は周辺と相互的に関わり、朝鮮学校の姿が地域の日常的な風景となるように意識した。 交錯する活動の風景 各階テラスでの活動は、吹抜けや高窓を介して校内の共有部や各諸室からも見渡すことができる。職員室からは玄関に入る来訪客、2階テラスで遊ぶ子どもたちと青い空が一場面として交錯する。2階の教室に入ると、中2階のテラスでヘチマを育てる子どもと室内広場のベンチで本を読む子どもの姿が交錯する。またテラスは吹抜けや共有部を介して室内の教室とつながり、拡張した教室の一部として利用することができる。東屋、水場、遊具を据えて授業で植物を育てたり、太陽を観察したり、テラスを日常的に使用できるようにした。 朝鮮学校は、在日同胞たちを繋ぎ、日本人と朝鮮人を繋ぐ橋を担う。この学校で子供たちが走りまわる姿を目にすれば、誤解が解けるはずだという保護者の言葉が記憶に残る。グラウンドから教室の中まで連続する雛段状のテラスは、その架け橋として、朝鮮学校の新しい開かれたシンボルになることを願っている。
