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〜半入れ子の距離感〜 JR大森駅から西へ、住宅地をやや奥へと長い坂道を上がりちょうど登りきった辺り、そこから狭い道はつづれ織りに一気に下って行くのだが、敷地はその丘の終わりの際にある。 変形した台形のような敷地の西側の一辺が接道し、前面道路との高低差は3〜4m。われわれの目標は、この高低差を克服し、視界が開けるだろう丘の上に居を提供することである。 そこで、擁壁の一部をえぐり駐車スペースに割当てて擁壁を造り、その擁壁の上にいくつかの法的斜線をクリアする木造2層の変形立方体の箱を載せ住宅としての気積を確保した。その変形立法体の内側にひとまわり小さい直方体の箱を組み込むと内部には三角形の立体の隙間ができる。 ちょうど立体空間の半入れ子の状態である。立体の隙間は空間の余白として、内外部の空間のつなぎとして使いたい。例えば、直方体の上部の隙間はおおらかな天井を備えたリビングとして、平面の隙間はドラマティックな吹抜けを持つ土間となり、玄関や和室はもちろんリビングやロフトを立体的に多様な関係を生み出しながら繋げられるのではないか。 また、隙間は隣り合ういくつかの空間の共用空間でもあるため、複数の空間の平面的な広がりを同時に提供する。その広がりは、和室や浴室、リビングに奥行き感を与え余白として上下の見えない空間さえも予感させる。さらに立体の隙間は内部と外部を緩やかにしきり繋げる干渉空間として機能する。 内部空間がダイレクトに外部に面するのではなく、立体の隙間を通して外部へ繋がる。外部からは、内部の空間と一見無秩序に開けられたかのような開口から住宅内部の関係が見える。壁の真中に立ち、お互い見えない両側の部屋がそこからは見えるような舞台装置のような不思議な関係である。 そしてその内部の隙間とコントロールされた開口の無秩序さが、外部と内部の関係性を単なる距離の問題としてではなく、空間の距離感をコントロールできるのではないかと考えた。 掲載誌:『住宅特集 2013年4月号』 『美しい住宅インテリアの見本帖』