Restaurant KUON

ビルディングタイプ
レストラン
6
179
日本 福岡県

補足資料

矩計図
図面

DATA

CREDIT

  • 撮影
    ikumasatoshi(TechniStaff)
  • 設計
    鶴田 二郎
  • 担当者
    鶴田 二郎
  • 施工
    イクスワークス

建築の全体性はどこに宿るのだろうか。要素が統合された形態のうちにか、それとも人がその場に身を置い た瞬間に立ち上がる、光や音、距離感といった知覚の総体のうちにか。建築が対象としてではなく経験として 現れるとき全体は初めて感得される。本計画はその成立条件を一つの風景において静かに問う試みである。 福岡県中南部、久留米市田主丸町。東西に連なる耳納(みのう)連山の麓に本計画は位置する。地域の野菜 や果物を用いた自然派レストランの開業を構想する当地出身のオーナーから建築設計の依頼を受けた。敷地 は500坪を超える元農地で、耕作を終えた後は野生の花木が自生し雑木林の様相を呈していた。 幾度かの現地調査とオーナーとの対話を重ねるなかで、林の中にふと開けた場所に行き着いた。頭上を斑鳩 がかすめ飛び、その囀りが周囲に響く瞬間、耳納連山に見守られるような安心感と自然の峻厳さと寛容さを 同時に体感した。この瞬間に生じた身体的な感覚̶̶視線の抜け、音の広がり、空気の密度̶̶を建築の内 部空間に移し替えることが本計画の主題となった。 車両動線や給排水計画といった実務的条件に加え、自生植栽の伐採を最小限に抑えつつその風景をいかに建 築に引き込むかを主要な命題とした。結果として建物は敷地東側の接道付近、雑木林への入り口にあたる位 置に南北に細長く伸びる簡潔な矩形として配置している。連続する自然景観の中で、商業建築としての人為性 が過剰に前景化しないよう線や面の構成は抑制的に整えた。 客席空間では南西側の壁を斜めに切り取るような大きな開口部を設け、外部との連続性を確保している。昼間 は自然光のみで成立する空間を目指し、時間とともに移ろう光が床や壁面に反射することで、必要十分な明 るさが得られるよう照明計画は最小限に留めた。開口部のサッシは存在を消すディテールとし、開閉の状態に かかわらず、内外の境界が意識されにくい状態をつくっている。 開口部越しに広がるのは手入れされた庭ではなく、四季に応じて姿を変える雑木林の風景である。夏には草 木が力強く伸び、冬には葉を落とし、幾重にも重なるレイヤーが奥行きを生む。ここでは人は意識する以前 に、光や音、気配として自然を受け取り、食事という行為を通してその場に身を委ねることになる。 建築の全体性は形態や構成の完結によってではなく、身体を通して経験が一つに結ばれるときに成立する。本 計画は建築を背景へと退かせることで、その静かな成立点を、風景の中に探るものである。

物件所在地

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