
「KOFFEE MAMEYA-Kakeru-(コーヒーマメヤ-カケル-)」は、バリスタの國友栄一氏による「KOFFEE MAMEYA」(2017)の新業態である。これまでのカウンタースタイルだけでなく、客席を設けることで、コーヒー1杯からコースやペアリング、カクテルなどのフルサービスまでを堪能できる。 私達はこうしたサービスを存分に体感してもらえる空間と時間を提供できる環境を探す中で、東京・清澄白河に縁が生まれた。かつて水運の拠点だった場所の名残で、今もこの街に数多く見られる倉庫物件が出店先となった。 設計を始めるにあたり、この場所ならではの佇まいを残す倉庫の外観はできるだけそのままに、新しく計画したサービスを表したキューブ型カウンターを内包した直方体だけを建物に挿入したような空間構成とした。これは國友氏と最初に手掛けた「OMOTESANDO KOFFEE」(2011)で試みたデザインアプローチともつながっている。 正面のカウンターは、表参道の「KOFFEE MAMEYA」と同じように豆を販売したり、テイクアウトに対応するスペースである。その奥に左右2本の動線が続き、中央の作業台で働くバリスタを囲むようなコの字型のカウンター席を設けた。そこは、言うなればバリスタが技を存分に発揮する舞台装置である。ここでは、1組に1人の熟練したバリスタがついて、技術や所作、接客を存分に楽しむことができる。 最初の「OMOTESANDO KOFFEE」からちょうど10年が経ち、世界中の素晴らしいロースターと培ってきた信頼関係や、在籍するバリスタたちが積み上げてきた技術があってこそ実現した業態である。ここは、國友氏がつくりたかった、バリスタたちの活躍できる新しいステージなのだ。これから国内外のシェフやパティシエをお店に迎え、さまざまなコーヒーとの掛け合わせ(kakeru)を提案することで、コーヒーのポテンシャルを最大限引き出すような、これまでにはない新しいコーヒー体験ができる場所になるだろう。