




PROJECT MEMBER
自転車やバイク、ピアノなど多彩な趣味をもつ夫婦が、移住先として選んだのは埼玉県鳩山町の里山に近い土地でした。コロナ禍をきっかけに在宅勤務が定着し、通勤のために借りていた都市近郊の住まいの必要性が薄れたことで、「暮らしと趣味が近接する家」を目指して計画が始まりました。 敷地は田畑が多く残り、奥武蔵の山々に近い、穏やかな環境にあります。本計画では、妻の趣味であるピアノ室を住まいの中心となる“コア”として据え、その周囲をそれぞれの仕事場とガレージが取り巻く構成としました。生活動線のなかにガレージを組み込み、収納にとどまらない、日常の居場所となることを意図しています。 ガレージは自転車とバイクのための空間として計画され、半透明の外壁によってやわらかな自然光を取り込みます。昼間は整備や出し入れの様子が外ににじみ、夜には街の行灯のように静かに光を放ちます。バイク用の大きなガレージドアと、自転車用のガラスドアを設けることで、屋外との行き来を軽快なものとしました。 リビングからは大きなガラス開口を介してガレージの様子を眺めることができ、二階の夫の部屋からも、突き出し窓越しにガレージを見下ろすことができます。乗ること、整備すること、そして眺めることが、日常のなかに自然と組み込まれたガレージです。 各仕事場には、岩殿丘陵に向かって水平連続窓を設け、緑の景観に開いた居場所としています。黒いシリンダー状のピアノコアを中心に、ガレージ、仕事場、居室がゆるやかにつながり、住まい全体に回遊性をもたらしています。 構造材には埼玉県産の西川材を用い、無垢フローリングや漆喰、塗装など、温かみのある素材で空間を構成しました。家具やキッチンは大工による造作、建具は建具職人による製作とし、ガレージを含めた住まい全体に、使い込むほどに味わいが深まる素材感を与えています。 妻の部屋には、隠し部屋のような畳のロフトを設け、楽しく暮らせる仕掛けを随所に配しました。外構は自分たちの手でつくっていくことを前提に、シンボルツリーのアオダモとスチールの門柱のみを設置しています。芝生や宿根草の植栽は現在も進行中で、ガレージを起点に、趣味と暮らしが里山の風景と少しずつ馴染んでいく住まいとなっています。