




PROJECT MEMBER
島根県出雲市に新たにオープンしたラーメン店「ラーメンSUN!」は、長らく使われていなかった木造2階建ての元和菓子屋を改修し、新たな飲食店舗として再生したプロジェクトである。 計画にあたり、既存建物の1階内部を解体し天井を撤去したところ、4本の大きな梁が現れた。これらの梁によって、かつて和菓子工房として使用されていた無柱の広がりある空間が成立していたことが明らかとなった。この気積の大きな開放的空間の魅力を継承しながら、ラーメン店としての明るさや親しみやすさを備えた空間デザインを目指した。 既存空間の特性を活かすため、新たに天井は設けず、解体によって露出した梁はそのまま現しとした。内壁には構造補強を兼ねた3×6板の構造用合板を用い、塗装仕上げとすることで、構造と意匠を一体化させている。また、合板の継ぎ目高さに合わせて塗り分けを行い、さらに建具や厨房の垂れ壁のラインもこの高さに揃えることで、空間全体に統一された水平ラインを形成し、秩序ある構成を与えた。 床については、和菓子屋時代の記憶を残す要素として、平面計画とは無関係に敷かれていた既存の床タイルを美装のうえそのまま活用している。新たに設けた出入口は、車道に面する既存外壁からセットバックさせることで安全性を確保するとともに、軒下に人が滞留できる半屋外空間を創出した。この際、既存の床タイルが内部から軒下へと連続的に現れることで、内外を緩やかにつなぐ役割も担っている。 施主からの「明るく親しみのある店舗」という要望に対しては、アイボリーと木目を基調としたシンプルな内装をベースに、暖色系のオレンジをアクセントカラーとして採用した。加えて、什器は角を抑えた丸みのある形状とし、柔らかく親しみやすい印象を与えている。 オレンジは、什器のフレーム、カウンターの笠木や見切り縁の小口、厨房内のタイル目地、ビニールカーテン、扇風機の羽根、階段のささら板など、「既存と新設」、「既製と造作」といった対比する要素に対して横断しながら用いている。これにより、異なる要素同士に共通性を持たせるとともに、空間全体にリズムと軽快さをもたらしている。 既存建物の履歴を尊重しながら、その空間的ポテンシャルを引き出し、新たな用途と価値を付与することで、地域に開かれた親しみある飲食空間を目指した。
7

