




かつて建築は、専門家だけのものではなかった。 「普請」と呼ばれる営みがあり、家や道、水路、寺社の修繕に至るまで、 地域の人々が力や知恵を持ち寄り、共同で環境をつくり支えていた。 建築は完成物ではなく、人の関係や地域の営みそのものと結びついた行為だった。 本計画は、熊野古道沿いの古民家をゲストハウスへ転用する取り組みである。 単に空き家を改修するのではなく、建築行為そのものをひらき、 人々が再び建築へ関われる状況をつくれないかと考えた。 そこで、大工・建築士・デザイナーを講師とした「空き家建築学校」を構想し、 地域住民や参加者と共に改修を行う場を立ち上げた。 施工の知識や技術だけでなく、地域の素材や風土、人の経験やネットワークを共有することで、この状況、この関係性の中でしか生まれない建築のあり方が立ち上がるのではないかと考えた。 全10回の授業を通じ、解体、施工、設計、申請、お金の流れまで、 空き家改修に必要な工程を実践形式で共有した。 参加者は都市部の学生、地域住民とその子供達、職人、行政関係者など多様で、 普請帳には500名以上の名前が記録された。 現場では、多人数だからこそ成立する施工方法や、身近な建材・廃材を組み合わせながら、状況に応じてブリコラージュ的に対応した。 高価な素材や特殊技術に依存せず、人の手と関わりの量によって空間の質を高める改修手法を実践した。

