
計画地は自然の豊かな駒沢公園付近の住宅街である。その土地は3方からの道路が入り混じるように接し、さらに東側の敷地形状も雁行しているという一切平行の線の存在しない18坪の変形狭小敷地であった。変形地故に、整った面積の確保が難しいこのような土地でも家族3人が暮らしやすい明るい住宅ができないかというのが建主からの要望であった。 まず土地を慎重に観察して見えてきたことが2つあった。1つ目は「2方向の隙間」である。雁行した道路に接した変形地。北側は隣家が迫り、東側には空地があるものの、隣家のテラス、奥のアパートの共用部等多くの視線に晒されている。その中で、敷地北東側の雁行した先、密集した隣地建物同士の隙間。この隙間から計画地に光が仄かに届いていた。次に道路に面する南側も、雁行していることで視線が抜け、光や風を取り込みやすいスペースが存在していた。2つ目は「2つのヴォリューム」である。変形した敷地内に要望となる建築可能な最大ヴォリュームを落し込む際に、ひょうたんのような形をしたこの敷地には2つのヴォリュームが生まれるのではないかと考えた。大小2つの建築が寄り添うような、緩やかな輪郭が見えてくる。 土地の周辺環境から見えてきた2つの手掛りから、「2方向の隙間」を望む「2つのヴォリューム」をコンセプトにプランを練り始めた。まず2つのヴォリュームには隙間に向かう「方向」を与える。北側のヴォリュームには南の向き、南側のヴォリュームには北側の向きを。そうしてできたヴォリュームを、定めた方向の上部に向かって立ち上げていく。それはまるで隙間という点に摘まみ上げられるかの様に緩やかに。定めた方向に伸びていく過程でヴォリュームは2つの五角形の駒のような平面となった。屋根形状は片流れ屋根ではなく、4本の登り梁で組む多面型屋根にすることで、室内の開放性を保ちながら周囲への圧迫感を軽減できるように計画している。この按排を調整しながら構成されたヴォリュームは、道路側と北側からの斜線制限もクリアし、更に周囲の住環境にも配慮したこの土地に適した形態へと成っていく。 内部のゾーニングは最も光や風を取り込む北側のヴォリュームの2階部分にLDKを配置した。その取り込んだ室内には製作のダイニングテーブルを配置した。約1800mm×1600mmという、3人住まいには持て余しそうなサイズのテーブルは外部から取り込んだ光や、風、景色を楽しみながら食卓を囲み、時には子供の勉強スペースとなったりと、いろんなかたちで家族が集まる場となってくれることを期待している。上部には勾配天井を利用したロフトを設けた。ロフトの骨組みは田の字に組み、吹抜けと交互にレイアウトすることで居場所によって見え隠れする勾配天井が空間の視覚的効果を生み出してくれる。南側のヴォリュームの2階にはご主人の書斎。将来的に子供部屋へと移り変わって使って頂く想定である。LDKに隣接させたのは、子供部屋となった際にLDKを介した動線計画としてほしいという建主の要望も含まれている。北側ヴォリュームの1階部分に、残る要望の主寝室、備蓄収納、洗面室、浴室をスムーズな動線となるよう丁寧にレイアウトし、南側1階部分に駐車スペースを配置した。 都内では密集した変形地は多く存在する。それらに全く同じ条件は存在せず、同じコンセプトは生まれない。建主には、逆に今回のような変形地だからこそオリジナリティのある間取りができたと言って頂けた。「2方向の隙間」を望む「2つのヴォリューム」は、それぞれの方向から、季節や時間帯、居場所によって異なる光、風、景色を内部へ取り込む豊かな住宅となった。N(北)を向くK(駒)、S(南)を向くK(駒)の住宅が完成した。
