
神保町靖国通りに面したビルの1階に入る古書店である。 クライアントは元々このビルで洋書の古書店を営んでいたが、他4人の共同オーナーと古書のセレクトショップとしてリニューアルオープンする事となった。それぞれのオーナーが取り扱う古書は洋書から和本、浮世絵や掛け軸、巻物など様々な種類があるためそれらの古書が自由に配置できる空間が求められた。 提案は一枚の長い壁である。この長い壁は曲線を描き店内にさまざまな居場所を生み出しながら外へ伸び、ビルをくるんでいる。壁には小さなホゾ穴が等間隔に設けられており、その穴を利用してその時々に合わせて棚を設置し商品を配置してゆく。パラパラと棚を置き洋書と和本を混ぜ合わせながら置いたり、棚を繋げることで巻物を置ける長い棚になったり、棚を取り払うことで壁一面に掛け軸を掛けられたりする。 壁の表面にはアルミニウムのシルバー塗装が施され、うっすらと周囲の色や人の動き、古書やその日の天気などをうつしこむ。 古書という長い歴史を持つ物と現代の様々な要素がこの壁を介して互いに混じり合うことで新しい風景のようなものが現れる古書店である。(名畑碧哉)