
公園を散歩していると、その日の天気、季節、時間によってうつろい続けていく空間を感じながら、その時々に応じて居場所をみつけ、過ごし方を変えていく。そんな公園と散歩道のような住宅の提案。 敷地は東京の小さな住宅街の一角。周りには大きな公園と小さな公園、それを結ぶ長い散歩道がある。この公園と散歩道は周りの住宅街に溶け込みながら、ここにしかない環境をつくり出していた。 そこで、目の前にある散歩道をゆるやかに建物全体へと引き込んでゆくことにした。 この道は、周辺環境と家をつなぎながら、どこまでが都市で、どこまでが家なのかを曖昧にしてゆく。散歩をしていると現れる坂道や広場のように、形と勾配が全て違う階段と様々な大きさの空間を配置することで建物全体の空間をゆるやかにつなげている。 道を包む壁は、2面ひし形金網、2面RC壁でつくられている。 道路に面した2面はひし形金網で包むことでプライベートな空間とパブリックな空間の解像度を落しつつ、ひし形金網につる植物をからませてあげることで、周辺の環境と同じうつろいが道全体を包み込む。RCの壁側は、ひっそりと身を潜められる内的な空間となっている。 構造体も同様に、徐々に都市へ溶け込んでいくような構成となっている。 2面異なった要素の壁をみながら家を巡り居場所をみつけいく。 それぞれの空間をつなぐ道は、天気やその季節によって、大きな道となったり、小さな道となる。そしてある時は、座って風景を眺める丘になったりみんなで集まる広場となり使い方も環境と共にうつろい続けていく。 1つの建築の中で、公園の散歩道のようにうつろい続ける環境で居場所をみつけ生活することで、家族との新たな距離感や関係性が生まれる予感がする。 今後も様々な生活の変化が予想される中で、その時の自分、家族のための居場所を自由に見つけることで、新しい家での過ごし方をしてもらいたい。 (小野 里紗)