




PROJECT MEMBER
鹿児島市郊外の住宅地に建つ、自邸である。 住宅は年々大きく、高性能になっている。一方で、暮らしの豊かさは床面積や設備だけで決まるものではないと考えた。本計画では、住まいの密度を床面積ではなく、そこで重ねられる時間によって高めることをテーマとした。 敷地は住宅に囲まれた旗竿敷地であり、北側と東側は崖に接している。一般的には不利とされる条件を解決すべき課題と捉えるのではなく、建物の配置や断面構成を導く前提として受け入れた。制約に素直に向き合うことで、この土地ならではの住まいのかたちを導き出している。 5mもの気積を持つLDK、南面から光を導く天窓、街との距離を整える低い軒、用途をもたないロフト。それらは空間を特徴づけるための要素ではなく、家族それぞれの過ごし方を受け止め、異なる時間をひとつの住まいの中に重ねていくための構成である。時間帯や季節によって光が表情を変え、家族の気配が立体的に交わることで、床面積では測ることのできない住まいの密度を生み出そうと試みた。 外装には杉板、内装にはラワン合板と無垢のフローリングを用いた。木質素材で空間全体を包み込むことで、建築の輪郭を整えるとともに、家具や暮らしの道具、差し込む光が空間の表情をつくる余地を残している。また、木は時間とともに色艶を深め、日々の傷や手触りを受け入れながら住まいの記憶を刻んでいく。素材そのものが時間を蓄積し、建築と暮らしをともに育てる存在となることを期待した。 住宅は完成した瞬間に価値が決まるものではない。住み続けることで時間が積み重なり、その場所ならではの風景が育まれていく。この住宅もまた、家族の暮らしとともに変化しながら、その価値を深めていく器となることを目指している。
