




PROJECT MEMBER
農地のグリッド 愛知県安城市の市街化調整区域に建つ住宅である。施主は分家要件を利用して農地を開発し敷地を取得したが、その結果、住宅としては大きすぎる敷地となった。周辺には畑やビニールハウス、小さな作業小屋などが点在し、均質な都市とは異なる、細かな建築スケールが繰り返される農地の風景が広がっている。本計画では、その環境に対して単一の大きな建物を置くのではなく、小さな単位の建築が連なるような構成を目指した。 建物は2400mmグリッドを基本単位として計画している。これは木造住宅としてはやや大きく、鉄骨造としてはやや小さい中間的な寸法である。このグリッドをもとに平屋のボリュームを雁行させながら配置することで、建物の間に外部空間が生まれ、敷地の中に複数の庭や視線の抜けが形成される。大きな敷地の中で建物が風景を遮断するのではなく、周囲の農地へと視線が抜ける状態をつくり出している。 施主は中学校で技術を教える教師であり、日常的に木工を行っている。すでに多くの家具や道具を自作しており、住宅には専用の木工室が求められた。木工室は屋外作業にも対応できる半外部的な空間として計画し、雁行するボリュームの一部として居室の内部に食い込むように配置している。作業空間は庭と直接つながりながら、住空間とも連続し、生活と制作の活動が緩やかに交わる位置に置かれている。また、施主が制作した家具や道具が空間の主体となるよう、建築はそれらの背景となるように計画している。 断面では、雁行する平面に対応して切妻屋根が連続する。屋根は同一の勾配を保ちながらずれながら連なり、内部には緩やかな天井の変化と奥行きを生み出している。構造は2400mmグリッドに沿って真壁で柱梁を現し、架構そのものが空間のリズムを形成する。木部にはシルバーのふき取り塗装を施し、木の質感を残しながら色彩を中立化させた。木造でありながら鉄骨フレームのような印象も帯びる曖昧な架構としている。 周囲の農地には鉄骨フレームのビニールハウスが多く建っている。本住宅のグリッドや架構の表現は、そうした農業建築の軽やかな構造体ともどこか呼応している。都市でも農村でもない市街化調整区域の環境の中で、この住宅は農地のスケールを参照したグリッドと雁行する平屋の構成によって、生活・作業・風景を緩やかに接続することを試みている。

