crhk

ビルディングタイプ
カフェ

PROJECT MEMBER

DATA

CREDIT

  • 撮影
    太田拓実 / 山田圭司郎
  • 設計
    COMMAGRAM.
  • 担当者
    前田基行
  • 施工
    清武ワークス 株式会社
  • グラフィック
    佐々木俊

crhk/サンエフ(2026,kobe) 当計画は、医療ビル3階の歯科医院跡を活用した新規カフェ事業である。解体後スケルトンのままだった空間には、躯体の静謐さや無骨さ、営みの痕跡が刻まれており、単なるブルータルではない記憶の積層を感じ、想像を掻き立てられるものであった。 神戸の中心地からほど近い花隈は、古くは城下町として栄え、神戸港の開港によって料亭や花街が軒を連ねた。街には、今もその趣きや人情味が漂っている。また、かつて海に面した小高い丘であったことや地名に神の存在が宿るなど、ロマンを内包する土地でもある。 そんな文化の根付いた場に、歯科医院の記憶を継承しつつ、施主の想いを込めた新たな基点を挿入する試みである。 「何もしないこと」を設計指針とし、既存に向き合い、最小限の介入に留めている。背景に、自ずからそうある状態を意味する「自然(じねん)」という考え方がある。混交林が多様な植生を育むように、躯体と家具、雑貨、人が混ざり合うことで、人工の中にも自然な関係性や循環が生まれると考えた。そして、空間を内部完結させるのではなく、街に対してノード化し、外部環境と緩やかにつながることを目指している。 出来上がった空間は、過去の印象が色濃く残っており、人為的な操作を極力排したことで、どこか雑然で混沌としている。雑とは、多くの意味を背景に持つ便利で複雑な言葉だ。文字通り仕上げが雑なのだが、それが新旧の境界を曖昧にする界面的役割を担っている。 歯科の間取りは、その性質から小さな個室が多い。今回は、全てRCの壁で動かすことができないため、現状の間取りを上手く利用することが求められた。幸い、入り組むような構成がどこか街角や路地裏のようにも感じられ、斫りや最低限の塗装による表面処理のみを行うことで、不可侵で隔たりのあるようでないような、結果、何もしていないようなピュアな空間が姿を現してくれた。 作り込まないことはサステナブルでもある。既存建具や設備配管の再利用、発生処分材であるガラの転用なども、アップサイクルの観点から有効だ。時代や思考性に見合う方法を選択することは、この先を見据えた視点への含み、耐力ある表現を可能とする。 痕跡を単なる記録ではない、人々の記憶を未来へ紡ぐ装置とすることは、この場所を知る人の追憶を呼び、初めて訪れる人にとっての新たな物語の起点となる。 街と人を緩やかにつなぐ場として、このカフェは新たな循環を生み出していく。

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