Casa Nostra - The Cabinet

ビルディングタイプ
オフィスインテリア

DATA

CREDIT

  • 撮影
    Koji Fujii / TOREAL
  • 設計
    株式会社中倉康介建築設計事務所
  • 施工
    株式会社アセンブルズ(B工事)/株式会社オリバー(C工事)

スポーツ関連事業を展開する企業のオフィスである。場所を選ばずに仕事ができるようになった現代において人が集まる意義を問い直し、組織の文化や価値観を身体で感じ取ることのできる「家」のような場所をつくりたいと考えた。そこに足を踏み入れた人が、自分がその組織の一員であることに、あるいはこの会社と関わり合うことに、誇りや意味を見出せる空間である。 クライアントとの対話の中で、現状リモートワークを中心に働いている社員同士やグループ会社間の連携を深めること、来訪者に社内を案内しながら社員の働く姿を自然に見てもらえる環境をつくること、スポーツ関連事業を展開する会社の姿勢を建築空間としてなるべく分かりやすく表現すること、などを重視する方針を決めた。アイデアが人を結び付け、その関係性が組織の力を育てていく。オフィスという建築空間を、その循環を支える場所として再定義し、過半の面積を執務以外のコミュニケーション空間に充てている。 建物全体は、社交と商談の場を兼ねたバーラウンジ「The Cabinet」、企業の理念や活動内容を語りかけるギャラリーと一体化した執務空間「The Work」、ガラス張りの会議室とトレーニングスペースが横に並ぶ「The Studio」から構成されている。 《The Cabinet》 地下への階段を下りると、空間は一転して静かな暗がりへと切り替わる。天井・壁・床をダークトーンで統一し、照度を抑えることで、機能的なオフィス空間とは異なる落ち着いたバーラウンジを構成した。無駄な照明を省くことで、天井に設けられたガラスブロックのトップライトが煌びやかに輝き、扉を開く前からここが特別な場所であることを予感させる。 ラウンジ内部には、異なる距離感を持つ複数の居場所を配置している。カジュアルな会話を誘発するハイカウンター、落ち着いて対話できるソファラウンジ、ゲストをもてなすバーカウンター。様々なコミュニケーションのかたちを受け止めることのできる、懐の深い空間である。ワインセラーをあえて客席側の壁面に設けたのも、ゲストと一緒にボトルを選ぶ体験そのものが関係性を深めるきっかけになると考えたからである。ソファの足元を彩るナインとタブリーズのビンテージ絨毯は、手仕事による精緻な模様と長い年月の中で刻まれた風合いで、空間に時間の奥行きを与えている。 部屋の一角には「The Cabinet」と名付けた小さなデスクスペースを設けている。本棚と飾り棚に囲まれたこの席は、映画『ゴッドファーザー』の中で、主人公のドン・コルレオーネが座る席の周りに絶えず相談者が訪れるシーンから着想を得たものである。クライアントがその映画が好きであると耳にしたことがきっかけであったが、象徴的な場所を設えることで、代表の不在時にもこのラウンジが社交の場でありながら、同時に商談が行われるビジネスの場でもあることを示すメタファーとして機能する。 ここはゲストとの信頼関係を築くためのソーシャルな空間である。

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