
地方創生を行っている友人から、ホップの生産地である岩手県遠野市でマイクロブルワリーをつくるため首都圏から移住した人たちがいるとの情報を聞き、テレビ会議で会うことからこのプロジェクトは始まった。彼らの「ホップの里をビールの里へ」「遠野に新しいビール文化が開花させる」というコミュニティブルワリーへの熱い想いに共感し、まだ自分が設計する訳でもないのに、遠野の現場に向かった。 先方がこのTAPROOMでやりたいことは、①元々の建物の雰囲気を生かす、②自分たちでできることは、自分たちでやる、③ブルワリーをつくる過程を地域の皆さんと有し、愛される場所に育てていくこと。 先方の想いと要望、限られたコストから、今、目の前にいる人やモノの力を最大限に生かし、店をつくり上げる。そんなアップサイクルなインテリアデザインができないかと考えた。具体的には、床は今まで使われてきた経年変化や味わいを生かし、天井は既存の天井を壊して、天井裏を見せた状態をそのまま利用。壁の塗装は、遠野醸造さん自らのDIY塗装。特注スツールは、小友木材の平野氏の協力で合板をキット式パーツに加工してもらい、ワークショップ形式で地域の方に製作してもらった。裏に製作者がサインを刻むことで自分の店のように愛着が生まれる。壁面のブラケットやドーム型の昔の電話台は、元々あったものを転用し、過去の記憶を継承。最後に、メインで使用しているヘリンボーン貼りは、岩手県産の杉材を地元の照井工務店さんに施工してもらい、ビールだけでなく、店で使用する内装材も地産地消で行い、手触り感のあるほっこりした空間となった。
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