TSUKUYOMI

ビルディングタイプ
共同住宅・集合住宅・寮

PROJECT MEMBER

DATA

CREDIT

  • 設計
    松島潤平建築設計事務所
  • 担当者
    松島潤平、立石遼太郎、福田俊
  • 施工
    タマリスク
  • 撮影
    古末拓也

閑静な住宅地にある、変形したメゾネット・アパートメントのリノベーション。 屈折した既存平面からリビングの形状を整える際に生まれた余地の一部を“インナーバルコニー”として設え、住空間のなかにちょっとした見立ての外部空間を挿入した。息抜きのため、趣味性を高めるため、家事の補助のため、主空間からはみ出た衛星のような空間が、日々反復する行動のなかに彩りを与え、暮らしの多様性を生み出す場所となる。 また、リビングとインナーバルコニーが接するコーナー部に円弧状のステンレス壁をしつらえた。その表面はバイブレーション加工が施されており、ブラ―が掛かったお互いの空間の湾曲した鏡像を映し合う関係をつくり出している。自分がいない場所の像がぼんやり見えることは、ストレスにはならないだろう。 とはいえ自らと無関係でもない場所の像は、完全に無意識な対象とはならないだろう。 こうしたリビングとインナーバルコニーの関係は、地球と月の関係に例えられる。人間はどの文明においても、地球の状態や周期性を読み取るために、地球そのものではなく、まず月を読んだ。夜空に浮かぶ月の位置や形状、光の強さから、自分のいる場所がいまどんな状態かを写し取る。その一方、月に降り立った宇宙飛行士たちが、さまざまな問題を抱える地球の根本的な美しさを再発見したように、インナーバルコニー側では、リビングの写像から日々反復する生活行動の根本的な尊さにも気付きたい。 月を読むように「ここではない自分たちの場所の写像」とともに暮らすことで、住まい手の生活の見つめ直しと再発見をさりげなく促す居住空間。作品名は、日本神道における記録と暦を司る神 “ツクヨミ” の名を拝借している。 このプロジェクトでは上記のコンセプトに合わせて、日本有数の木製家具メーカー“カリモク家具”とテーブル、チェア、ベンチ、ソファ、奈良に拠点を置く照明ブランド“NEW LIGHT POTTERY”とペンダントライトのコラボレーション・デザインを行った。 テーブル、チェア、ベンチはブラックウォールナットを基材としながら、それぞれ異なる部位の一端がわずかに削られており、そこからオークの木肌が露わになっている。オークによる月光のようなアクセントによって、オーセンティックに整えられた形にふと目を引く表情を与えている。 伸縮率や反り等、性質の全く異なる樹種を自然に合体させたことはカリモクの技術力だからこそ可能な成果である。オークとウォールナット、それぞれが持つ木肌の美しさを同時に比較することで、木という素材の深い奥行きを楽しむことのできるデザインとした。 チェア、ソファ、ベンチのクッションは土色と銀色のファブリックを組み合わせたツートーンとして、オークによる月明かりとともにアクセントのある表情を持たせている。

1