Haddo Yard

ビルディングタイプ
共同住宅・集合住宅・寮

DATA

CREDIT

  • 設計
    Denizen Works
  • 担当者
    Murray Kerr, Andrew Ingham
  • 施工
    Yellowjack
  • 構造設計
    Morph Structures
  • 撮影
    David Barbour

Haddo Yard デニゼン・ワークス設計により、イギリス南東部に位置する海岸町ウィスタブルに誕生した〈Haddo Yard〉:根強い漁師コミュニティが存在する街のアイデンティティーを継承したデザインを持つ、7世帯の集合住宅である。本プロジェクトの名前の由来は、20世紀前半にこの街を拠点としていた小説家、Somerset Maughamの作品“The Magician”に登場するOliver Haddoから来ている。 敷地はウィスタブル駅の向かい側と、道行く人の目に留まる立地となっていて、東側には小規模な商店が並び、西側は住宅街の始まりとなっている。両サイドの間を取り持つ建築として、低層部分は薄色の煉瓦を使用し東側の商店と同様のスケール感を立面的に保ちつつ、西側低層部分と2・3階の外壁にはコントラストの強い濃色の煉瓦を使用している。 存在感の強い黒屋根のフォルムとトーンは、古くから栄えるウィスタブルの海岸線を埋め尽くす漁師小屋のシルエットを継承している。開口部に使用されているオーダーメイドの三角タイルは、屋根のデザインをモチーフとし、それを3の倍数として並べている。これは町の各所で見られるファイアンス焼きタイルからもインスピレーションを受けている。“パブリック”な立地である事を認識した上で、地域性と強いアイデンティティを兼ね備えた正面を持つ建物となっている。 ローコストが一つのチャレンジでもあった本プロジェクトでは、現場で余った資材のリユースや、安価で手に入りやすい建材の利用方法を再構築する事を意識した。建築及びランドスケープデザインのクオリティを保ちながらも、オンバジェットを実現出来るよう、様々な工夫が用いられている。敷地境界線に並ぶプランターや設備収納には、現場で余ったコルゲートパネルを型として打ち込んだ、彫刻的且つ力強いコンクリート壁のデザインを使用し、ウィスタブルを守る防波堤のデザインを彷彿とさせる。建物内外で設置されている金物類は、地元の職人により、低コストながらも地域性が垣間見られるデザインとなっている。 内部空間は、自然採光が最大限に入るよう、各住居が二面或いは三面採光になるよう設計されている。リビングなどの主要居住空間が南側に配置され、設備やユーティリティ関連の部屋には光の届かない部分を利用し、細長いプランを有効活用している。共有空間は基準よりも広く、使いやすさを意識し、表現豊かな仕上げの組み合わせとなっている。“住居者が快適に住み、楽しく隣人と会える空間”を目指す、クライアントであるディベロッパーの意向が設計チームの想いと重なり、ローコストながらも良質な集合住宅が実現した。 本プロジェクトでは、広い範囲での敷地・エリア分析を行い、ウィスタブルの歴史、文化、コミュニティから成り立つ町のアイデンティティを認識した上で、場所作りとその過程に適したコラボレーションを目指した。入念に時間をかけながら、地元の職人のスキルと知識を最大限に活かせる信頼関係を築けた事で、様々なビスポークなディテールが生まれ、建築に“個性を持つ土着性”と言う豊かなレイヤーを加えた。

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