松原市民松原図書館

大阪府松原市の既存図書館の建て替えによる新館計画である。敷地は市の文化施設が集まる田井城今池公園内のため池の一画という特殊な与件であり、また、事業スキームは、設計・施工一体型であることから、その特徴を最大限に活かした建築が重要な鍵になると考えた。 松原市を訪れて印象的だったのは、ため池や古墳がまちの中に点在する風景である。住宅地の中にスケールを逸脱した人工物が、永い時間を経ることであたかも自然物のように存在しているのである。それは建築的なスケールを越えた、土木的な存在であり、この土地に永く建つことのリアリティであるように感じられた。 そこで、私達は水の中に力強く存在する土木的な外郭を持つ建築を考えた。外壁は、地震時の水平力を全て負担するとともに、必要な断熱性能を確保することが可能な、600mmの厚いRC壁とした。強靭な外壁によって、内部空間は、鉄骨造による自由度の高いスキップフロア状の構成を可能とし、人の動線や風が立体的に巡る空間を生み出した。 量感のある外郭から感じられる雄大な時間と、自然のゆらぎや人が行き交う風景が映し出す日常の時間が同居することで、この建築が時間を越えてまちの人々に永く受け止められる存在となるではないだろうか。

クレジット

  • 設計
    MARU。architecture
  • 担当者
    高野洋平、森田祥子、児玉貴典、直塚敬司
  • 施工
    株式会社鴻池組
  • 構造設計
    Arup
  • 撮影
    中村絵

データ