
DATA
- ビルディングタイプ
- その他オフィス・企業施設
- 構造
- 木造
- 工事種別
- リノベーション
- 延べ床面積
- 101.08㎡
- 竣工
- 2021-02
CREDIT
- 設計
- 白石卓央 / 株式会社愛媛建築研究所
- 担当者
- 白石卓央
- 施工
- 株式会社西渕工務店
- 撮影
- 宮畑周平 / 瀬戸内編集デザイン研究所
内子町は江戸時代から明治時代にかけて和紙と木蝋で栄えた町で、繁栄の様子は、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されている街並みや、歌舞伎にも利用される木造芝居小屋「内子座」に表れている。松山市から40km程の距離にあり、南予地方(愛媛県南部)の入口としての性質も備えている。 内子の中心部にオープンしたCOWORKING-HUB nanyo sign(南予サイン)は移住相談窓口を備えたコワーキングスペースである。クライアントである一般社団法人えひめ暮らしネットワークは愛媛県全域の移住促進や地域おこし協力隊のフォロー等に取り組んでおり、nanyo signには、コワーキングスペースというだけではなく、南予地域への移住促進と、テレワーカーなどの誘致を目指すことが求められた。 改修対象となった建物は内子の観光の拠点として建てられたもので、1階に飲食店と事務所、2階に多目的スペースが整備されていた。しかし2階の多目的スペースの利用頻度は必ずしも高くはなく、この場所をコワーキングスペースとして改修することとなった。 コワーキングスペースは、ビジター利用という形で誰にでも利用できる場所として計画を進めたが、利用者の一端として考えられる「地域おこし協力隊」やそのOB・OGは、それぞれが個性を生かした働き方をしており、そのネットワークには分野横断的な活動を含めた興味深い動きがあるように見受けられた。また、このスペースで愛媛・南予への移住相談ができることも大きな特徴である。そのため、集中して作業ができる空間だけではなく、人やものに出会い、交流し、働く――そういった相互作用や流動性の起こる空間が想定された。イベントとしての利用も考えられる。 そこで、計画としては、倉庫や事務室として利用されていたスペースを、集中的な作業やウェブ会議などに利用できる個室・会議室として3室備える形(=閉じたスペース)とした上で、天井が高く広いスペースは、個人作業だけではなく協働が可能な、例えるなら大きなリビングのように設えることを考えた。その上で「内子座」の見える窓際にカウンター席を設け、もう一方の壁沿いには床座の可能な小上りを設けるなど、ひとつの大きな空間でありながら各々の利用者にとってフレキシブルな使い方ができるようなデザインを行った。リビング――住宅としての見立ては、このスペースに入る際に「靴を脱ぐ」という行為にも繋がっている。落ち着きのある心地よい空間づくりとともに、20世紀的なオフィス空間からの脱却を図った。