巡る間

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「AICA 施工例コンテスト 2023」最優秀賞 設計:tyfa/Takaaki Fuji + Yuko Fuji Architecture, Areano Inc. 所在地:神奈川県 用途:戸建住宅 竣工:2023年3月 工事種別:新築 採用商品:モイスTM耐力面材(外壁下地・内壁) 将来拡幅が予定されている都市計画道路に面し、建物が寿命より先に解体される可能性がある敷地において、容易に解体でき、移築可能な木造住宅、そしてそれが独自の空間性を生むことを目標に設計した。 ホームセンターでも入手可能な3種類の規格木材をボルトで固定するのみで成立しており、組み立て・解体の際に特別な技術は必要ない。部材もすべて手で運べる重さである。仮に移築されなかったとしても、ほぼ規格材のままなので、容易に再利用することができる。 内装仕上げ兼外壁下地として、断熱性や遮音性が高く、構造材にもなる「モイスTM耐力面材」を用いている。 外壁は、モイス上に外断熱を施し、古来より風呂桶などで使われている水に強いサワラ材にて仕上げた。室内側はモイスが温湿度を調整し、表面の鉱物が光を増幅し、快適性や省エネルギーに貢献する。簡単なつくりの住宅だが、HEAT20のG2の外壁断熱性能を達成している。 合わせて環境シミュレーションによって、逗子の地形形状(谷戸)を生かした光・風を、3つのハイサイドライトから取り入れることにした。 モイスの多機能性が成立させた新しい形式の住宅である。 審査講評 石上 純也 今回の審査の中で、この作品は本コンペの意図を代表していると感じた。 将来拡幅が予定されている都市計画道路に面し、容易に解体でき、移築可能な木造住宅である。 ほぼすべてを規格品で計画することで、一般的には、仕上げ材として利用されることが多いアイカ工業の製品を、建築全体をかたちづくるコンセプトの中核の一部に位置づけている。 建築設計を大きく超えるタイムスパンである都市計画に対して、柔らかく建築を適合させ未来まで生きながらえることを見越した極めて現代的な提案だ。