ニュアンスで取り入れるテラコッタ | TILE TREND COLUMN

【テラコッタは、ブームから次のフェーズへ】 テラコッタやテラコッタカラーは、2023年から2024年にかけて、コロナ禍後の癒やしを求める潮流の中で「素焼きの温かみ」が広く再評価されました。2025年9月のCERSAIEではその勢いが落ち着き、表現の方向性が変わり始めていることが感じられます。テラコッタ特有の土物らしさを強調したこれまでの表現から、現代の暮らしに馴染む洗練されたテラコッタへと、ブームを経て次のフェーズへ変化している印象です。 〇素材の本質と時間の積み重ね テラコッタやレンガは、その土地の土を焼いて作られる自然な素材です。フィレンツェやシエナの歴史的な街並みでは、屋根瓦や床、広場に至るまで、焼成された土の赤褐色が街全体を形づくっています。年月を経て摩耗し、色が深まることで、完成した瞬間よりも時を刻むほどに美しさが増していく──そんな素材の性質が、これらの街並みから読み取れます。 〇ルイス・カーンが示した、近代建築における思想 近代建築家ルイス・カーンは、「レンガは何になりたいのか」という問いを通じ、素材を建築の根源的な構成要素と捉えました。その思想を象徴するインド経営大学アフマダーバード校では、幾何学的なレンガ積みが光と影の交錯を生み出しています。時間帯によって変わる光を受け、壁面は赤からオレンジ、褐色へと表情を変え、時間とともに移ろうことで空間に奥行きを与えています。 〇現代へとつながるテラコッタの役割 フィレンツェやシエナの街並み、そしてルイス・カーンの建築に共通しているのは、テラコッタやレンガが空間全体を支える背景として使われてきたという点です。壁や床を主張させるのではなく、全体のトーンを整える背景として用いるこの“引き算の美しさ”は、現代のトレンドにも通じます。幾度かのブームを経た今、テラコッタはようやく建築の文脈に立ち返って活用され始めているように感じられます。 ニュアンスで取り入れるテラコッタ─「センシテッレ」 現代のインテリアに取り入れるテラコッタとしてふさわしいシリーズが2025年9月の新商品「センシテッレ」です。 _________________________________________________________________________________ センシテッレ / Sensi Terre イタリアの建築家・デザイナーであるマッテオ・トゥーン(Matteo Thun|1952- )が手がけた「センシテッレ」は、土のニュアンスや焼成感をしっかりと感じさせながらも、過度にラフになりすぎない洗練された表情が特徴です。色調も抑えられており、空間に自然に溶け込むようデザインされています。いわゆる「テラコッタらしさ」を強く主張するのではなく、今の暮らしに寄り添う素材としてのバランスが丁寧に整えられています。また、最新技術によって職人が手仕事で仕上げたような質感を再現している点も見逃せません。工業製品でありながら、機械的な冷たさを感じさせない表情は、このシリーズならではの魅力です。