触覚で選ぶ、これからのタイル―細溝という表現|TILE TREND COLUMN

【触れたくなる壁が増えている】 2025年のCERSAIE(チェルサイエ)では、フラットな面に加えて、表面に繊細な溝や起伏をもたせたタイルを会場の至る所で目にしました。溝が光を受けることで生まれる陰影は見る角度や距離によって表情を変え、壁面そのものの印象を刻々と変化させます。2024年頃から増え始めた細い溝状の面状は、2025年にさらに進化を遂げ、単に溝が刻まれているだけではない、立体感や奥行きにニュアンスをもたせた表現へと進化していました。 現代の建築では、美しさだけでなく「五感でどう感じられるか」が重要視されています。デジタル化が進む今、視覚を超えた触感や温度感が求められており、細溝面状のタイルはその象徴と言えるでしょう。光がつくる陰影や微細な凹凸が生む「触れて確かめたくなる存在感」こそが、2026年のタイルデザインにおける極めて重要なキーワードとなっています。 【タイルで表現する「細溝」という選択】 建築史の文脈から見ると、現代のタイルにおける細溝表現の意義が明確になります。工業製品であるタイルは、高い精度と再現性を備えつつ、デジタル技術によって職人の手仕事のような自然な揺らぎや奥行きを再現。均質になりすぎることなく自然な揺らぎと奥行きを空間にもたらします。 2025年のCERSAIE(チェルサイエ)では、フラット面と細溝面をセットで展開するブランドが多く、面状を切り替えて空間に抑揚を生む提案が目立ちました。特に「石目調×細溝」の組み合わせは、素材の魅力を引き出す手法として注目されています。トラバーチン調では立体感が際立ち、石灰岩調では柔らかな陰影のリズムが空間に品格を与えます。視覚だけでなく、触覚や光との関係まで含めて素材を捉えるこの姿勢こそが、現在のタイルデザインにおける大きな方向性といえるでしょう。 石目調×細溝―「サンドエッセンス」と「フィブラージュ」 細溝の潮流を取り入れた2025年の新商品を2点ご紹介します。 ■サンドエッセンス(600角・600×300角) 砂丘のイメージと軽やかなマーブル模様の微細な筋が織りなす表情により、石灰岩の上質な風合いを忠実に再現したシリーズです。流動的なラインと有機的な模様が生み出す優しく滑らかな質感が、空間に穏やかな安らぎをもたらします。600mm角と600×300mm角のサイズ展開で、壁・床のいずれにも使いやすく、空間のスケールや用途に合わせた柔軟な使い分けが可能です。石灰岩の持つ穏やかな表情に現代的な質感を重ねた「サンドエッセンス」は、主張しすぎることなく空間全体の印象を底上げする存在です。細溝や凹凸意匠が注目される中で、“触感” や “陰影” を洗練された感覚で取り入れたい場面において、2026年に向けた次世代の空間づくりの潮流を先取りするシリーズといえるでしょう。 ■フィブラージュ カラーボディと表面釉薬の一体感が空間全体の格調を高め、石灰岩の風合いをソフトなカラーで表現した上質なシリーズです。特殊面状として展開される細溝は手仕事で刻んだかのような繊細な意匠で、光を受けることでやさしい陰影が生まれます。素材感を程よく取り入れたい空間や、全体の雰囲気を上品にまとめたい場面に取り入れやすく、バランスの取れた表現力が「フィブラージュ」の魅力です。 人は空間の中で、無意識のうちに壁に手を触れています。そのときに感じる質感は、視覚以上に空間の印象を心に刻むことがあります。細溝面状のタイルに触れると、わずかな凹凸が指先に伝わり、自然の素肌に触れるような生きた質感が静かに呼び起こされます。均質で整った面が溢れる現代だからこそ「触れて感じる質感」がもたらす安心感や親しみやすさは、特別な意味を持ち始めています。タイルは、面を仕上げる素材から、感覚に寄り添う素材へ。タイルは、再び “触れたくなる素材” として存在感を高め、触れたくなる壁がこれからの空間の新しいスタンダードになっていくのかもしれません。