ポジティブ・イミテーション

ビルディングタイプ
別荘

DATA

  • ビルディングタイプ
    別荘
  • 構造
    木造
  • 工事種別
    新築
  • 延べ床面積
    153.56㎡
  • 竣工
    2022-10

CREDIT

  • 設計
    邸宅巣箱
  • 担当者
    早坂直貴 / 斧田裕太
  • 施工
    出口建具店
  • 構造設計
    杉本将基構造設計事務所
  • 撮影
    長谷川健太

イミテーショナルな素材には、「使わざるをえなかった」という弁明が付き纏うのはなぜだろう。圧倒的なクオリティまで昇華した模造品をみるとき、むしろその背後にある製造者の企業努力や技術力が透けてみえて、感動することはないだろうか。イミテーションを素直に肯定することでデザインの可能性を開くこと。本作はその実践である。  敷地は134号線の海岸通りに位置する。オーシャンビューを求めて北欧風、西欧風、和風と有象無象の別荘が建ち連なり、これ以上ないイミテーショナルな風景を為している。  その風景と地続きになるように、イミテーショナルな崖ボリュームをつくる。このクローズなボリュームには水まわりなど裏方の生活機能が納められている。一方でその崖の上には、表の生活機能であるLDKを擁したオープンな平屋を載せた。この崖上からは眼下に素晴らしい海景を体験できる。イミテーショナルな存在の上で、人間の暮らしは豊かになるという図式である。  そして素材選びにもイミテーションを積極的に採用した。崖にはジョリパットを、デッキには樹脂を、畳にはボロンを用いている。こういった人工素材はメンテナンス性に優れて、概して生活に利便性をもたらす。  このように現代人の生活は間違いなくイミテーションの上に成り立ち、それは現代テクノロジーの結晶としてある種の美点を備えている。イミテーションを素直に肯定することで、デザインにもより多くの可能性が開かれるのではないだろうか。

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