
小学校らしさを残しながら機能を刷新する. 2017年に成田市が公募したプロポーザルである「久住第二小学校跡地利活用に係る事業者の再募集」において運営受託者として選定されたリオン不動産が運営する宿泊施設の計画である。6年間ほど使われずに廃校となっていた久住第二小学校は片廊下式の純粋な学校建築で南側の校庭は広々としていた。日本の玄関口である成田国際空港に近接し、ここから次の日に旅に向かう出発点としての宿泊施設とキャンプ場を整備すること、またその宿のネーミングやロゴタイプなどのブランディングまで一気通貫した計画を求められた。事前に開発行為申請を経て用途変更が可能となるように手を加え、改修工事を行う流れで計画を進めた。幸い建築自体は非常にきれいに管理されていたため、大きく手を加えて改修することなく、小学校らしさや子供たちのスケール感に合わせた各部のディテールを丁寧に残しながら表層を更新する手法で設計を行った。特に長い片廊下は梁のスパンごとにボールド状のフレームを挿入し、奥まで見通す景観が単調にならず、また空港のターミナルに見られる番号式の誘導サインを各部屋にしつらえ、連続的にそれらが見えることで旅への期待感を増幅することを意図した。元々下駄箱のあった玄関は、エントランスロビーとして宿泊者を出迎える。カウンターは30mm角のヒノキ材で格子状に立ち上げ、成田山新勝寺などのある歴史風土や伝統的な日本らしさを感じられる意匠を施し、外国人の来訪者も楽しめるデザインコンシャスな空間を目指した。特に運営者が地域と結びつき交流しながら、地域イベントなどを企画し、子供達も楽しめる施設運営がなされている。より地域と深く関係を築き、地域の振興に主体的な役割を担う施設となっていくことを願っている。