




PROJECT MEMBER
山梨県下に8店舗を展開する美容室グループの本社ビルに隣接する本店(TOMI美容室KAMIYA)計画である。都留市街の中央を走る「富士みち」(大月から都留を経由して富士吉田まで至る街道)に沿って立つ築37年の本社ビル、その2階にあった店を新たに取得した隣接地に独立した平屋の店舗として建築し、双方を結んで本社機能のさらなる充実を図ることが課題であった。 都留はTOMI美容室発祥の地であり、このTOMI美容室KAMIYAには、グループ全店舗のなかにあって象徴的な役割が期待されていた。したがって平屋といえども天空から光を取り込む豊かな空間を生み出したいと考え、慎重に方位を読み、室内から見てより青が美しい北の空が味わえるよう、また過度な直射日光がささぬよう、高窓の位置と形状を工夫した。バタフライ型の屋根はそうしたスタディーの結果であり、また建物が水と戯れるための工夫でもある。屋根のすべての水はこの屋根形状に導かれて集められ、一個のガルゴイユを通して庭の円形の水盤に降り注ぐ。おそらく客やスタッフの目を楽しませてくれることだろう。昼は太陽を反射して天井をゆらめかせ、夜は光を湛えて水面がゆらめく。富士みちと並行して走る通り沿いにはテラスや庭を配した。9月初めの八朔祭りではこの道を大名行列が練り歩き、引き切りの木製建具によって全面開口が可能なテラスを通してその風情を内部からも眺めることができる。6脚あるカットスペースは一列に並ぶのでなく、120度の角度をもって立つ鏡入りの衝立によってゆるやかに仕切られ心理的な距離が取られている。椅子に座ればそのすべてから、この開口とテラスを通して外の景色が見える。 この古くは谷村城下町である都留という地域への愛着もひとしなみでないオーナーの意向を汲んで、富士みちと大名行列の道とのあいだを結ぶ通り抜けの小径を配した。すなわち、この小径に沿ってエントランスをとり、また金木犀、夏椿、楓、常緑山法師、冬青などの緑や広場を配することによって、地域の人々に愛される風景を生み出すことをめざしたのである。そのため建物の平面を矩形でなく人々の動きや視線を導く三角形状とした。このことによって、通り抜けの風景に変化と期待がもたらされると考えたからである。 「サロン」とは「ビューティーサロン」すなわち美容院であり、オーナーが日頃美容室をさしていう呼称であるが、それはそのまま文字通り地域の人々の集いの場、憩いの場としての「サロン」がめざすという気持ちの表れでもある。あえて「都留のサロン」と名づけた理由である。 既存の建物にはエレベーターがなかったので、階段室を含み込んだタワーを建て、ブリッジによって両者を連結した。このタワーと階段は既存建物の屋上まで伸びていて、街の景観にインパクトを与えるもう一つのエレメントである。頂部はタワーの存在が重たくなり過ぎぬよう三角形にカットされており、壁には一箇所だけ円形の窓がある。小さな円形のガラスブロックもランダムに埋め込まれ、蛍のようにぼうっと闇に浮かび上がる。マルとサンカクとシカクは、各所に意図的に用いられているのだが、とりわけ円は、オーナーが縁に結びつけて解釈されてから、この建物の隠れたモチーフの一つともなった。
