




熊本市南部の新興住宅地の一角にある敷地は、街区住民のみが利用する道路と近隣の総合病院駐車場に挟まれていた。そこで、間口6間×奥行き2間の偏平で小さな平面を病院駐車場側に寄せて、敷地への視線をカットしつつ道路側にバッファー(将来的には庭として設える予定)を設ける配置とした。 1階の道路側に間口を活かした連窓を設け、奥行き1間の深い軒を出すと道路、前庭、軒下、住宅が東西方向に平行に並ぶ。連窓には障子が嵌り、軒先には簾が掛けられる。また、内外で小梁の向きを変えることで分節を強調し、さらに床材を通し張りとすることで面を帯状に分割するなど東西方向にストライプ状の補助線が引かれ、生活と街との間に階層的な奥行きや選択的な厚みが生まれる。1階がまるごと縁側になったような様相である。 1階が一室空間であるのに対して、2階は部屋を1列に並べている。梁間方向の中央1間を耐力壁とすることで、両端半間は開口となり桁行き方向に視線が通る。重なる内部開口の先には総合病院の庭に植えられて大きく育ったサクラやイチョウの木々が顔を覗かせ、奥の部屋にいても木々の雰囲気を感じられる。2階全体が緑景を引き込む洞となり、深い階層の中に多彩な居場所が生まれる。 偏平の読み替えによって、小さな家はふたつの対比的な特徴をもった大きな窓辺の積層として構成された。それに対して、小さな窓辺とでも呼びたくなる場所も同時に計画した。ニッチのようなキッチン、北面採光の明るい階段室、縦滑り出し窓と内部開口が合体した読書窓、吹抜けで近景(病院駐車場)をカットしつつ、東にある公園や阿蘇の山々を展望できるブリッジなどである。 この小さな介入によって、全体は大きな対比関係へと矮小化せず、生活を受け止めるためのしなやかな弾力を生む。 ふたつの大きな窓辺と全体に散らばる小さな窓辺の重なり合いの中を逍遥するような生活。街との関係は柔らかく抑揚し、そして揺れ動く。小さくて偏平という選択が生活の歓びに転じる可能性を考えた住宅である。
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