タイルは従来の「表面を仕上げる素材」という「機能的な面材」から、空間の空気感を創造する「本質的な要素」として注目されています。単に色や柄が移り変わっているのではなく、素材そのものが持つ表情や質感の深さへ関心が高まっている印象です。これは単なる意匠の変化ではなく、タイルの設計領域が「色や柄」から「表情や質感」へと拡張していることを示しています。 【グロス(光沢)とマット──再評価される質感のコントラスト】 近年のSalone del Mobile(ミラノサローネ)では、グロス(光沢)とマットという異なる質感の相関関係に注目が集まっています。長らく主流だったマットな質感に、洗練されたグロス(光沢)が融合することで、空間において新たな役割を担い始めました。重要なのはグロス(光沢)とマットが別々に存在するのではなく、同一の空間や素材の中で互いを引き立て合う点にあります。この対比が奥行きとリズムを生み、タイルにおいても複数の質感を重ねる豊かな表現へと繋がっています。 また、立体面も進化を遂げており、特に縦リブの意匠は光をコントロールする設計要素として重視されています。ピッチや高さを繊細に調整することで、光を柔らかな揺らぎとして空間に広げる役割を果たしています。 ______________________________________________________________________________ リマーリア / Rimalia 2026年の新商品「リマーリア」は、グロス(光沢)とマットの融合、立体的な凹凸面状、そしてTuscan Dusk(タスカンダスク)のカラーバリエーションを併せ持つ3つのトレンドを同時に体現した、2026年注目のコレクションです。光を反射するグロス(光沢)と、光をやわらかく吸収するマットという対極にあるふたつの性質を一枚の中に落とし込むことで、時間帯や見る角度によって異なる印象を生み出します。この表情を支えているのが、凹部に施された釉薬技術です。釉薬の溶け具合によって一枚ごとにわずかな表情の差が生まれ、均質でありながらも単調ではない、「リマーリア」ならではの奥行きある表情をつくり出しています。 240×60mm角のブリックフォーマット。この細長い形状は、視線の流れを促す要素として機能します。人の視線は、長い方向に沿って自然に導かれる傾向があり、縦方向に配置すれば視線は上へと伸び、空間に高さを印象付けます。一方、横方向に配置すれば、視線は水平に導かれ広がりを感じさせる表現へとつながります。つまり、同じタイルであっても、張る方向によって空間プロポーションの印象を調整できる点が大きな魅力といえます。 さらに、この形状は壁面に連続的なリズムを生み出します。240×60mm角というサイズは、「人が片手で掴めるか」という実用性に基づくレンガのスケール感に由来しており、空間に温もりと親しみを与えます。また自然界に着想を得た全10色は、鮮やかさと落ち着きを兼ね備えています。特に「Tuscan Dusk」を彷彿とさせるカラーは、質感や凹凸と響き合うことで、光と時間の移ろいを感じさせる豊かな空間体験へと昇華しています。 ___________________________________________________________________ オプスセクティーレ / Opus Sectile 新商品「オプスセクティーレ」は、古代から中世ローマで発展した大理石象嵌技法「Opus Sectile(オプス・セクティレ)」を一枚のタイルという新しいかたちで再解釈したコレクションです。 異なる色や質感の石を幾何学的に組み合わせるこの技法は、ローマ近郊のオスティア・アンティカ遺跡などの歴史的遺構にも見られます。石材の境界に生まれるわずかな溝、経年による艶の対比、そして光の角度によって穏やかに変化する陰影。整然とした幾何学美の中に、素材の個性と時の痕跡が共存している点に、「Opus Sectile(オプス・セクティレ)」が今なお人を惹きつける理由なのかもしれません。 「オプスセクティーレ」は、大理石の境界に生じる繊細な溝ややわらかな光沢感を最新の3Dテクノロジーで忠実に再現し、遺跡のような深淵さを表現しています。複数の質感が重なり合う表情は現代のタイルトレンドと呼応し、特にセージグリーンの「ABI-AC6510H」は、Tuscan Dusk(タスカンダスク)を思わせる色彩と響き合い、現代性と歴史的な趣が同居する独創的な魅力を放ちます。 ___________________________________________________________________ 「リマーリア」と「オプスセクティーレ」。 これら2つのコレクションに共通するのは、表面の奥に幾層もの表情を秘めた「質感の多層性」です。光を反射し、繊細な陰影によって刻一刻と表情を変える「リマーリア」。そして、現代的な感性に古代遺跡の“深淵さ”を重ね、時の流れを封じ込めた「オプスセクティーレ」。 多様化する価値観に寄り添い、さらなる表現の豊かさを求めて。タイル一枚から始まるデザインの進化は、これからも続いていきます。