【テラゾーの歴史 ── 廃材の美学から世界の床へ】 テラゾー(Terrazzo)はイタリア語で「テラッツォ(Terrazzo)=テラス、床」を意味し、15〜16世紀のヴェネツィアで、大理石の端材をモルタルに混ぜるリサイクルの先駆けとして誕生しました。この工法はイタリア全土や地中海沿岸へ広がり、顔料やガラスなど多様な素材を取り入れながら、宮殿から市場まであらゆる床を彩りました。 20世紀には近代建築にも取り入れられ、1920〜30年代のアール・デコ期には都市の商業施設等で広く普及します。戦後の1950〜60年代には公共建築へさらに浸透しましたが、1970年代以降は新素材の台頭により表舞台から退いていきました。しかし、その素材としての記憶は今も歴史的建築の中に静かに守り伝えられています。 【テラゾーの再評価】 テラゾーは2010年代半ば、ヴィンテージへの関心や、不均一な骨材がもたらす有機的な表情、SNSでの視覚的な魅力から再び注目を集めました。 2025年のCERSAIEにおいて、テラゾーは大理石や木などと並ぶ「定番5素材」の一つとして、現代のセラミックデザインに完全に根付いた存在でした。その特徴は「現代的な再解釈」の深化にあります。単なる再現ではなく、粒の大小や色の組み合わせを現代の感覚で再構築し、さらに表面技術の革新によって骨材の凹凸まで再現する「触覚的なリアリティ」を追求していました。素材感そのものを魅せる表現こそが、CERSAIE2025年のテラゾーが示した方向性のひとつでした。 ■ネスティングルーム 「ABK」×「moooi」の新商品「ネスティングルーム」の核心にあるのは、「静寂の聖域 (Sanctuaries of Stillness)」というコンセプトです。絶え間なく動き続ける世界において、「静寂」は心に安らぎをもたらす聖域となります。シリーズ名の「ネスティング(Nesting)」は、英語の「巣をつくること」に由来しています。鳥が枝や草を集め、丁寧に形を整えて巣をつくるように、素材を選び、空間を整え、自分だけの場所をつくる行為──そこには帰る場所があるという安心感と、心身を整える再生の感覚が込められています。 デザインのインスピレーションの源── 3つの象徴的な動物たち コレクションのインスピレーションの源となったのは3種類の動物です。静寂に包まれた修道院の鳩(Cloistered Dove)、砂の上に儀式のような様を描くレア(Reiki Rhea:ダチョウに似た大型の走鳥類)、そして催眠的な眼差しを持つフクロウ (Hypnotic Owl)。これらの動物たちの記憶や自然の造形美は、触覚に訴えかけるような繊細なテクスチュアへと昇華されました。 ■エッグスケープ/Egg Scape(1200×600角・600角) CERSAIE2025のテラゾートレンドを最も体現しているのが「エッグスケープ(Egg Scape)」です。卵の殻が無数の結晶の複合体であるように、このシリーズはテラゾーの本質である「断片の集合」や「偶発的な美しさ」をタイルの表面に写し取っています。 繊細な擦れや亀裂、テラゾーを思わせる小さな断片など、自然界の「不完全さ」を捉えた表情は、日本の「わびさび」の思想にも通じ、欠けや割れを素材の美しさとして取り入れています。 ■サンディ/Sandy(1200×600角・600角) 「サンディ(Sandy)」は、砂の色や質感を模倣するだけでなく、砂という素材が持つ記憶をタイルに落とし込んだシリーズです。足裏に感じる粒子の温もりや波に研がれた滑らかさなど、文化を超えて人々の記憶に繋がる感覚を表現しています。 遠目には均質に見え、近づくほどに密度を増す細やかな粒子感は、砂浜のような安定感を空間にもたらします。カラーは、Ivory(白い砂)、Terracotta(赤茶の砂)、Volcano(黒い砂)といった自然のグラデーションに、Hay、Powder、Concreteが加わることで、現代の空間に馴染む豊かな色域を生み出しています。 ■パヴォーネ/Pavone(1200×600角) 「パヴォーネ(Pavone)」はイタリア語で「孔雀(くじゃく)」を意味します。孔雀の羽根の繊細な手触りを、最新の3DTech技術によって再現。視覚と触覚に訴えるリアルな質感を実現したシリーズです。カラー展開は3色で、いずれも日常の中で落ち着いた存在感を放つ、洗練された色合いを揃えています。サイズは1200×600角の受注輸入品です。抒情的な質感をもつ「パヴォーネ(Pavone)」は、ひとたび目の前にすれば、その美しさに誘われて、実際に触れてみたくなることでしょう。 ■プリュマージュ/Plumage(1200×600角) 「プリュマージュ(Plumage)」は、フランス語で「羽毛・羽根の集まり」を意味します。「パヴォーネ(Pavone)」が羽根の凹凸を触覚で語りかける素材であるとするならば、「プリュマージュ(Plumage)」は羽毛のような軽やかさを視覚に語りかける素材です。表面は平滑な仕上げで、装飾的なパターンが凹凸なく艶の違いで描かれています。「パヴォーネ(Pavone)」は触覚のタイル、「プリュマージュ(Plumage)」は視覚のタイル──同じ「羽根」というモチーフを扱いながら、異なる質感を持つこの2つのシリーズは、触れることと見ることの両方から、羽根という自然の造形の豊かさを感じることができます。